春日狂想/中原中也

愛するものが死んだ時には、
自殺しなけあなりません。


愛するものが死んだ時には、
それより他に、方法がない。


けれどもそれでも、業(?)が深くて、
なほもながらえることともなったら、


奉仕の氣持ちに、なることなんです。
奉仕の氣持ちに、なることなんです。


愛するものは死んだのですから、
確かにそれは死んだのですから、
もはやどうにも、ならぬのですから、
そのもののために、そのもののために、


奉仕の氣持ちに、ならなけあならない。
奉仕の氣持ちに、ならなけあならない。


ではみなさん、
喜び過ぎず悲しみ過ぎず、
テムポ正しく、握手をしませう。


つまり、我等に缺けているものは、
實直なんぞと、心得まして。


はい、ではみなさん、ハイ、ご一緒に―――――
テムポ正しく、握手をしませう