過去も未来も報われる毎日を

ついに念願の複数タイトルを手にして、川崎フロンターレの2020年は幕を閉じた。そして同時に、中村憲剛の現役生活も終わってしまった。正直、欲しかった天皇杯を獲った喜びよりも、その終わりに胸が張り裂けそうで涙が出た。
準決勝の秋田戦を見ながら、まだまだ出来るのになあなんて考えたりしたけれど、自分で引き際を決めることのできる選手は本当に少なくて、ましてや現役生活を同じチームで過ごすことなんかほとんどないのだから、この終わりに感謝をするべきなんだろう。でも、淋しい。今年の等々力の選手紹介に憲剛はいない。公式サイトの長い長いアンケートに答える憲剛はいない。ピッチ上で試合をコントロールする憲剛にはもう会えない。そんなことを受け入れるには時間がかかるに決まっている。だって17年間も一緒に戦ってきたんだ、現役生活がいつか終わることはわかっているつもりでも、いざ現実になれば簡単に「はいそうですか」とはならない。
もちろんこれ以上はないってくらいのよく出来た終わりだと思っている。中村史上最高の1年であることに異論はない。わたくしが見送ってきたほかの選手たちは、ひとつのタイトルも獲ることができなかったのがほとんどなわけで、5つも星を獲って終われるなんて、素晴らしいことだと思う。ただ、それとこれとは話が違ってタイトルがいくつあれば悲しくないということにならない。流した涙が結果として報われたことで、なんとか終わりを受け入れようとしているだけだ。

セレモニーが終わって、最後までピッチに寝転がって帰ろうとしない憲剛を、遠いスタンドから眺めた。その姿に、ありがとうと大好きをたくさん込めて、手を振った。